ホントのトコロ~獣医師チップ先生のコラムで正しい知識を~
猫の3大感染症 ~第2回 * 猫エイズ(FIV)~ | 2007/7(vol.7-2)
これらの病気はぜひとも皆様に正しい知識を得ておいていただきたいので3週に分けてお届けします。第2週目は「猫エイズ」です。byニャンダフル
今回は猫のウイルス病のうち、「猫白血病」、「猫エイズ」、「猫伝染性腹膜炎」についてお話ししようと思います。これらは日常の診療で比較的よくみられる病気ですが、様々な症状を示すうえ、診断や治療は難しく、十分な予防もできません。また、私が飼い主さんに対して、これらの病気について説明している時はいつも、「説明がちょっと難しくなってしまって、分かりづらかったかな?」などと考えてしまいます。今回のお話を読んでもらうことで、今まで分かりにくかった私の説明を、少しでも補うことができればいいなあと思っています。
猫免疫不全ウイルス(猫エイズウイルス)感染症についてお話ししましょう。このウイルスに感染してしまった猫は、免疫力が低下してしまい、様々な症状が見られるようになります。この病気は感染の時期や病状によって、急性期、潜伏期、リンパ節腫大期、エイズ関連症候群期、エイズ期に分けられます。では、各時期の症状について説明しましょう。
急性期では発熱、リンパ節の腫れ、白血球数の減少、貧血、下痢などが見られます。ウイルスの感染から、2ヵ月くらい(最長で4ヵ月と言われる)でこの時期に進行します。
潜伏期では症状がみられません。また、その期間は猫ごとに幅があり、それは猫の状態やウイルスの毒力に左右されるようです。この時期は、ある程度の免疫力を保つことができるため、きちんとした生活管理を行っていれば、それ以上病気が進行しないまま、一生を終えることも可能だといわれています。
リンパ節腫大期ではリンパ節の腫れ以外に異常が認められないため、飼い主さんから見ると、病気かどうかはっきりしない時期のようです。 しかしその後、猫がエイズ関連症候群期に至ってしまうと、免疫異常に伴う症状、例えば口内炎や歯肉炎、風邪症状、消化器症状、皮膚病などが見られるようになります。そして、通常は1年以内に、末期状態であるエイズ期に進行してしまいます。
エイズ期では、免疫不全による様々な合併症、例えば白血病ウイルス感染症と同じような二次感染もみられます。また、骨髄の働きが抑制されることによる貧血や白血球数の減少、その他に神経症状がみられることもあります。しかし、そうなってしまった場合でも、対症的な治療しか行うことができません。なぜなら、薬で体内からウイルスを取り除く方法が、いまだ確立されていないからです。
このウイルスは、感染している猫の唾液に多量に含まれているため、主に闘争での咬傷によって伝播していきます。しかし、毛づくろいなどの、接触だけによる感染はほとんどないと考えられています。そのため、屋外猫の雄がもっとも感染率が高いようです。日本ではワクチンが未発売であることから(海外で承認されているワクチンもまだまだ問題点が残されています。)、この病気の予防に対しては、感染猫との接触や闘争を避けることと、猫ちゃんがすでに感染していないかどうかを調べることが重要になります。
感染がないかを調べるためには、血液検査による抗体反応の検出を行います。この病気の場合、急性期の症状がみられた時点では既に、ウイルスが血液中の白血球の中に侵入してしまっています。またこの時期、体内ではウイルスに対抗するため、免疫物質である抗体が作られます。しかし、一度白血球の中に入ってしまったウイルスは、抗体で排除することができません。
つまり、「ウイルスに対する抗体反応が見られるということ」=「ウイルスが感染しているということ」になります。
ただ、6ヵ月以下の仔猫の場合は、母親からもらった免疫のために陽性反応がでることがあります。その際は、何度か再検査を行わなくてはなりません。また、ウイルスが感染した後、陽性反応がみられるまで(急性期になるまで)は2ヵ月以上(最長4ヵ月)の時間が必要です。そのため、検査結果が陰性でも、感染の可能性がある場合には、2ヵ月ごとに再検査が必要になります。また、病気の末期では、免疫力が低下し過ぎているために抗体が作れず、検査結果が陰性になることもあるようです。
今回は、少し難しいお話になってしまいました。これらの予防できない、治療できないウイルスの病気に対しては、感染猫との接触を防ぐことと、なるべく猫ちゃんにストレスをかけないということが大切です。そのためのいろいろな方法や、いろいろな考え方がありますが、それを実行するためにはおうちの状況や、飼い主さんの考え方なども影響してきます。獣医師とともに、おうちにあった最適な方法を考えていかなければなりません。