ホントのトコロ~獣医師チップ先生のコラムで正しい知識を~
猫の3大感染症 ~第1回 * 猫白血病(FeLV)~ | 2007/7(vol.7-1)
これらの病気はぜひとも皆様に正しい知識を得ておいていただきたいので3週に分けてお届けします。第2週目は「猫エイズ」です。byニャンダフル
今回は猫のウイルス病のうち、「猫白血病」、「猫エイズ」、「猫伝染性腹膜炎」についてお話ししようと思います。これらは日常の診療で比較的よくみられる病気ですが、様々な症状を示すうえ、診断や治療は難しく、十分な予防もできません。また、私が飼い主さんに対して、これらの病気について説明している時はいつも、「説明がちょっと難しくなってしまって、分かりづらかったかな?」などと考えてしまいます。今回のお話を読んでもらうことで、今まで分かりにくかった私の説明を、少しでも補うことができればいいなあと思っています。
まず、猫白血病ウイルス感染症についてお話しします。白血病とは、血液中に異常な白血球が出現し、それが増えてしまう病気(血液の腫瘍の一つ)のことです。猫白血病ウイルスという名前は、その血液腫瘍を引き起こす原因になるウイルスという意味でつけられました。しかし実際には、白血病になる全ての猫がこのウイルスに感染しているわけではありません。また、このウイルスが原因で引き起こされる病気は、白血病だけでもないのです。他にも、ウイルスが骨髄や脳に影響を及ぼすことで、貧血や神経症状がみられることがあります。妊娠中の猫では流産の原因にもなるようです。これらのようにウイルスが直接引き起こす病気以外にも、ウイルスに対する異常な免疫反応の結果、腎臓の炎症が起こることや、赤血球が壊れて貧血になることもあります。また、ウイルス感染が持続すると全身の免疫力が低下してしまい、他のウイルスや細菌、真菌、原虫などの感染症も起こりやすくなります。そして、治療はその病状に応じて行うしかありません。
もしこのウイルスに感染したとしても、通常は体内で抗体という免疫物質を作り出すことで、ウイルスを排除しようという働きが起こります。この抗体がきちんと機能すれば、ウイルスの排除とともに再感染も予防できます。しかし、ウイルスが骨髄にまで感染してしまうと回復は難しく、常に血液中にウイルスが存在している、「持続感染」という状態になります。その「持続感染」に達するまでには、ウイルス感染後、約2週間(最長6週間)くらいかかるようです。そして、そうなってしまった猫は3年以内の死亡率が8割に達するともいわれています。また、若い猫ほど持続感染には陥りやすいようです。 持続感染の猫の唾液中にはウイルスが多量に含まれるため、他の猫に対する感染源になってしまいます。感染猫との密接な接触、主に「毛づくろいをしあうこと」によってウイルスは伝播されていいきます。また、持続感染にはならないまでも、ウイルスが骨髄の中に潜んで発症の機会をうかがう、「潜伏感染」になることがあります。その場合、明らかな症状は見られません。しかし、病気や妊娠、寒さなどのストレスが加わる事で発症する危険性があります。
一般的に行われている診断方法は、血液検査によるウイルス抗原の検出です。より厳密に結果を判断するために、いくつかの測定方法を組み合わせることもあります。検査を行うのは、症状からウイルス感染が疑われる場合、新しい猫ちゃんを家族として迎え入れる場合、そして予防接種をする場合です。 陽性結果はウイルスの持続感染を意味します。結果が陽性でも明らかな症状がみられない猫では、4ヵ月後に再検査を行います。その結果も陽性ならば、持続感染と判断し、今後の発症を注意して管理、観察していく必要があるでしょう。もし結果が陰性にかわった場合は、ウイルス感染から回復できたと判断してもいいのですが、潜伏感染している可能性も十分に考慮しなければなりません。 通常の陰性結果は「感染していない。」と判断しますが、やはり潜伏感染している可能性は否定できません。また感染して日が浅く、持続感染に至っていない場合(感染後2から6週間以内)も陰性の結果が得られるので、もし感染の可能性があるのなら、約3週間後に再検査を行ったほうがいいでしょう。
この病気には予防のためのワクチンがあります。外に遊びに出る猫ちゃんや、すでに感染している猫ちゃんと一緒に暮らしている場合は予防接種を受けるべきでしょう。ただ、ワクチンの予防効果が100%ではないことから、これらの猫ちゃんは毎年の追加接種前に再検査が必要です。また、猫の生活環境や年齢がウイルスの感染率に影響すること、ワクチンの種類によっては接種方法が煩雑になること、非常に低い確率だがアレルギー反応やワクチンの接種部に腫瘍のできる可能性があること、などから予防接種の必要性については獣医師とよく相談して決めるべきでしょう。
今回は、少し難しいお話になってしまいました。これらの予防できない、治療できないウイルスの病気に対しては、感染猫との接触を防ぐことと、なるべく猫ちゃんにストレスをかけないということが大切です。そのためのいろいろな方法や、いろいろな考え方がありますが、それを実行するためにはおうちの状況や、飼い主さんの考え方なども影響してきます。獣医師とともに、おうちにあった最適な方法を考えていかなければなりません。